筆者よりご挨拶
筆者は炭とお湯、そして食糧があれば、地震や台風などの災害で電気・ガスなどが止まっても、生存可能だと思っています。
仮に何らかの事情で国内の石油などが不足しても、炭は備蓄エネルギーとして十分機能すると考えます。
本書で使用する「炭と湯たんぽ経済システム」という表現の意味は「地球の生態的限界を超えない現実的で持続可能な経済・エネルギーシステムの構築と、人間の生活様式」です。端的に言えば「低炭素&happy slow life」です。
これは太陽光による光合成由来の木材などの植物をエネルギーの原料とする限り、地球全体の生態系から見ればCo2の増減がないシステムであるという意味でもあります。
本書では「炭と湯たんぽ経済システム」を略して「炭湯システム」と表現したいと思います。炭湯システムは森林の価値や森と海の共生的価値などを含む概念であると同時に、ゆったりとした潤いのある人々のライフスタイルを創造したいという期待も込めています。
この概念を基本に、これから始まるSociety 5.0、そして人工知能やIOTを駆使した新しい農業、交通、都市などの持続可能な生活システムを構築したいと考えています。
人類の生活を歴史上最も長く支えてきたのが炭湯スタイルであるという事実を基本に現代社会を見直し再構築する試みでもあります。
太陽エネルギーは地球の外から「無料」で毎日地球に降り注いでいます。ところが石油やガスなどは、地中から「有料で化石燃料を使って」で取り出す必要があります。
太陽は太古の昔から、地球に一方的に光と熱源を供給してくれています。さらに、地球の大気を維持するために光合成によって酸素を供給してくれています・・・
果たして宇宙の創造主にそういう意図があったかどうかはともかく・・・光合成という「自給自足的」で「循環型」で「持続可能」なシステムが構築され機能しています。
人類の食糧は、まさにこのシステムのお陰で成立しています。これまでのところ、食糧はほぼ完全に太陽と光合成に「依存」しています。
日本の神道では天照大御神が太陽の神様として伊勢神宮に祭られています。太古の昔から人類は太陽の恵みで命をつないできたことを既に自覚していました。
まさに「神様」=太陽のお陰です。この「お陰さま」という言葉も文字通り「太陽の影」が起源です。
影と陰は何が違うのでしょうか?
影とは、物体の形に添ってできる具体的な形を持った暗いところになります。陰とは、陰陽の言葉のとおり、個別の物体の形に制限されず、広い意味での「暗いところ」であり、「明るいところ」に必ず付随する「暗いところ」という相対的な意味合いも含みます。
太陽という広く遍く地球に恩恵をもたらしている存在の「お蔭」、仏教でいうところの、「仏様のお陰」、つまり、人知を超えた大きな力の結果生じる、ありがたい事象が、「お陰さま」だと思います。
日本人は、その歴史のなかで、神道を育み、その頂点の神様として天照大御神をいただき、それを基に神様全体の体系を考えたのだと思います。
全ては太陽のお蔭、太陽の恵みで人類は生存していることを、太古の昔から意識していたことの証左だと言う事ができます。
これは、日本人は太古の昔から太陽を神として敬う民族であり太陽エネルギーが人間生活の大本にあることを認識していたということです。
そして、光合成の結果生じた木から炭を作り、その炭を熾してお湯を沸かし、湯たんぽで厳しい冬を乗り越えてきた歴史があります。
炭は燃え尽きれば灰となります。畑に撒けば酸性をアルカリに中和する働きをしてくれます。
炭は生まれた時から、また土に帰るまで、完全に再生循環するので、人間にとって害は何もないどころか、燃え尽きた最後まで役に立ってくれます。
しかし、放射能の灰は未来永劫、10万年以上も人類にとっては危険なものであり続けます。更に原子力は核兵器のように人類を破滅させる可能性をもった技術でもあります。
炭と原子力の違いは明白であり、目先の損得ではなく、持続的で長期的な人類の生存という観点で、炭と湯たんぽの再活用を真剣に、また、同時に楽しみながら検討する時期に来ていると思います。